マタニティ(妊娠中/産後)
更新日:2017.09.19
【助産師監修】出産前から知っておきたい、「母乳育児」の基礎知識
マタニティお役立ちコラム【【助産師監修】出産前から知っておきたい、「母乳育児」の基礎知識】ナチュラルサイエンスのfor Mama & Kids Smileでは、ベビーやキッズ・マタニティ・美容や健康に関する役立つコラムを皆さまにお届けしています。
【助産師監修】出産前から知っておきたい、「母乳育児」の基礎知識
厚生労働省の調査によると、93%もの妊婦さんが「母乳で育てたい!」と思っている※そう。現在妊娠中のママのほとんどが、母乳育児を希望されているのではないでしょうか。そこで今回は、助産師 代田佳恵先生監修の「母乳育児の基礎知識とママに気を付けてほしいポイント」をご紹介します。
※厚生労働省「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」(2015)より:「ぜひ母乳で育てたい」「母乳が出れば母乳で育てたい」含む
赤ちゃんのためにもママのためにも、できるだけ母乳で育てましょう
多くのママが望む、母乳育児。母乳育児には、次のようなメリットがあります。
1.母乳特有の免疫物質で病気にかかりにくくなる・重症化しにくくなる
2.乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが低くなるという報告がある
3.赤ちゃんのあごの発達が促される
4.ママと密着することで、自然なスキンシップにより愛着が深まる
5.乳首を吸われることで、ママの体の戻りが早くなる
6.ミルクよりも経済的
上記のとおり、母乳には多くのメリットがあります。できる限り、赤ちゃんは母乳で育てることをおすすめします。母乳はミルクほど腹持ちがよくないため授乳回数が多くなり、育児に慣れないママにとっては大変ですが、赤ちゃんとのスキンシップタイムと考えて、楽しみながら授乳をしてくださいね。
ただ、母乳で育てたいと思っていても、なかなか母乳が出ずに落ち込むママも少なくありません。産後のメンタルが不安定な時期に母乳の出が思うようでないと自分を責めてしまう方が多いのですが、決してママのせいではないので落ち込まないでくださいね。1滴でも母乳を飲ませてあげることができたら、母乳育児だと思います。母乳のみでまるまる大きくしてあげることだけが母乳育児ではありません。
また「母乳不足」と「母乳不足感」も違います。多くは母乳不足感でミルクを足している方が多いです。すべてごっちゃになって「母乳、母乳」と責められているように感じてしまうこともありますよね。何よりも大切なのは、母乳でもミルクでも、赤ちゃんの成長に必要なだけの栄養を与えてあげることです。
母乳の量が不安な場合は、専門家に相談を
母乳育児だと、新米ママはおっぱいが十分に出ているのか不安になりますよね。母乳だけでは足りない場合は、ミルクで不足分を補うことも必要です。赤ちゃんの成長に必要なだけのおっぱいが出ているのかママが判断するのは、とても難しいこと。心配なときはお住まいの地区の保健所や産科の助産師さんなどの専門家に相談してみましょう。体重の増え方も見てもらいながら専門家にアドバイスをもらえば、ママも安心ですね。
お産が終わるとおっぱいの分泌がスタート!
さて、ここからは産後の母乳の出方についてです。
お産が終わりママの体から胎盤がはがれると、体の中でプロラクチンというホルモンがどっと分泌されます。このホルモン、妊娠中は主に乳腺の発達を促していましたが、出産後は乳汁の分泌を促します。これにより、出産と同時におっぱいが出るようになるのです。
ただ、いきなり母乳がどっと出るわけではありません。初めて出産したママの中には、想像していたようにおっぱいが出なくて不安になってしまう方が多くいますが、だんだんと出るようになるので落ち込まないようにしましょう。
おっぱいをどんどん吸わせて母乳量をUP!
乳汁の分泌をうながすプロラクチンは、おっぱいを出さないと約2週間で非妊娠時と同じくらいの量になってしまいます。おっぱいが出ないからと言って母乳をのませる回数が少ないと、あっという間に出が悪くなってしまいます。初めてのお産の後はとても疲れていると思いますが、入院中から積極的におっぱいを飲ませてあげるようにしましょう。
いつまでに始める?妊娠中のおっぱいケア
母乳育児を目指すなら、妊娠中から乳首のケアをすることも有効です。マッサージや保湿ケアで乳首を柔らかくしておくことで、赤ちゃんも吸いやすくなり授乳中のおっぱいトラブルを減らせます。
ただし、乳首への刺激は子宮の収縮につながるので、妊娠初期や切迫早産気味の人は避けましょう。「いつまでに始めなきゃいけない」ということはありません。始めるタイミングは、お医者さんや助産師さんに相談しましょう。
そのほか、こんなところにも気をつけて!
いい母乳を出すには、しっかり栄養を取らないといけない!と思われる方も多いですよね。しかし産後は、ゆっくり食事の準備をすることはできません。あるものでおなかを満たすなんてことも多いはず。お父さんにお惣菜を買ってきてもらったり、お弁当の宅配などを上手に使って乗り切りましょう。
また乳腺炎が怖いからと言って食事を制限する方もおられますが、乳腺のつまりを防ぐのに最も大切なことは、赤ちゃんが母乳を効果的に飲みとることです。赤ちゃんをしっかり引き寄せて、乳頭を深くくわえられるようにしていきましょう。
鉄分・ビタミンCを積極的に摂りましょう
母乳は血液からつくられるので、母乳の分泌が増えるとママは貧血を起こしやすくなります。妊娠中の貧血不足に鉄分を積極的に摂っているママも多いと思いますが、授乳中も続けた方がいいでしょう。鉄分はビタミンCと摂ると吸収されやすくなります。
赤ちゃんのためには「ビタミンD」も不可欠!
ここ最近、赤ちゃんのビタミンD不足による「くる病」が問題になっています。母子手帳から「日光浴」の項目が消えたことなどにより紫外線対策の意識が高まり、過度に外出を避けるママが増えているようです。肌のために紫外線を防ぐことは悪いことではありません。しかし過度なUVケアにより、かつては日光に当たることで作られていたビタミンDが不足しがちなのは事実です。
また、赤ちゃんのアレルギーを心配してママが食事制限をしてしまう(野菜ばかりに偏った食生活になる)ことで、母乳のビタミンDの量が減ってしまうといった原因もあるようです。妊娠中~授乳中は、野菜中心の食生活に偏りすぎず、赤ちゃんのためにも積極的にビタミンDの多い食材(魚類、きのこ類、卵など)も意識して摂るようにしましょう。赤ちゃんのためには、ママは過度な心配のあまり極端な食事や生活スタイルにならないよう、頑張りすぎずにいることが大切かもしれませんね。
※現在、アレルギーが心配な方も妊娠中、産後食事制限をすることはほとんどありません。アレルギーなどが心配な方は、自己流で食事制限をするのではなく、必ずかかりつけ医に相談してから行ってください。
ママの「冷え」は1年中注意が必要です
母乳は血液からつくられるので、体が冷えて血行不良になると、母乳不足や乳腺炎の原因になります。また、妊婦さんの冷えはおなかの張り、体のむくみ、足のつり等様々なトラブルの原因になるため、体を冷やさないようにすることが重要です。夏でも冷たい飲み物やエアコンによって意外と体が冷えています。妊婦さんや授乳中のママは、季節を問わず冷え対策が必要です。
「育児のちょこっと休憩」が赤ちゃんのためにも必要です
赤ちゃんが生まれたばかりのママは、出産という一大イベントを終え、ホルモンバランスはガタガタ。さらには授乳とおむつ替えで夜も全く寝られない…そんな過酷な状況で頑張りすぎれば当然体にストレスがかかり、母乳不足の原因になります。
責任感の強いママは「育児をサボっているみたいで気が引ける…」と1人で頑張りすぎてしまいますが、時にはパパやおばあちゃんになどに一定の時間赤ちゃんの面倒を見てもらうのも大切。ママがリラックスすることが母乳の出を良くするだけでなく、ニコニコ笑顔でまた育児ができるようになり、結果的に赤ちゃんのためにもなるのです。
※ 参考
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」
(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0314-17b-1.pdf)
厚生労働省「平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要」(2015)
監修
代田佳恵(助産師・看護師)
東京都渋谷区を中心に、マタニティ&産後ヨーガ、ベビーマッサージ、母乳相談など、妊娠から卒乳までのケアなどを行っている。